2016年10月から社会保険の適用が拡大!扶養内で働く上で注意することは?

2016年10月から社会保険の適用が拡大!扶養内で働くために注意することは?

みなさんは2016年10月に、社会保険に加入条件が拡大したこと、ご存知ですか?

すでに知っていたという人もいれば、そうでない人もいるでしょう。この「社会保険の適用拡大」、配偶者など家族の扶養に入って働く人にとっては、大きな変化だったのです。

今回は、特にこれまで家族の扶養内に入って働いていた人に向けて、「社会保険の適用拡大」について掘り下げていきます。

そもそも社会保険って何?

そもそも社会保険って何?

まずは、社会保険の基礎知識を押さえていきましょう。

社会保険は簡単に言うと、
「人生にはさまざまなトラブルがある。そのようなトラブルにあってしまった人を助けるために、みんなが少しずつお金を出して、さまざまな手助けを受けられるようにしよう」という考え方にもとづいている公的な保険制度です。

社会保険は一定の要件を満たす対象者が必ず加入しなければならないものですが、生涯起こりうるリスクに備えて保険料を支払うことで、実際にリスクが起こってしまったときに最低限の生活を維持するための公的保障を受けることができます。

また、社会保険は「医療保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」(広い意味での社会保険)の5つに分けられ、それぞれ病気・ケガをした人、失業者、高齢者などの生活を支えています。これら5つのうち、会社勤めの人の場合は「健康保険(医療保険)」「厚生年金保険(年金保険)」「介護保険」(狭い意味での社会保険)の金額のうちの半分を会社が負担しています。

この会社が負担する社会保険には加入条件があります。ひとつは社会保険が適用される事業所であること、もうひとつは「一定時間以上」働いている従業員であることです。

これまでは、「通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数の4分の3」(正社員の所定労働時間が週40時間ならば週30時間)以上働く人が、「一定時間以上」の対象となっていました。正社員やほぼフルタイムで働いている時給労働者(パートタイマーやアルバイトなど)が、社会保険適用の対象とされていたのです。

しかし、この社会保険適用の対象となる範囲が、2016年の10月からの「社会保険適用拡大」によって大きく変わることになりました。「一定時間以上」の条件設定がゆるやかになり、従業員数501人以上の会社で働いている人なら(従業員数500人以下の会社で働いていても、労使の合意があれば)、下記要件をすべて満たせば社会保険に加入できるようになったのです。

  • 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
  • 1ヶ月あたりの決まった賃金が88,000円以上
  • 雇用(見込み)期間が1年以上
  • 昼間学生ではない

この社会保険適用の拡大によって、これまで労働時間が短く、各種社会保険に加入できなかった人も適用の対象となり、「健康保険」「厚生年金保険」などを会社に半額負担してもらうことができるようになりました。

より多くの人が国からの保障を会社負担で受けられるようになったのは喜ばしいことです。ただそれに付随して、これまで家族の扶養に入って働いていた人には、けして小さいとはいえない変化が生じることになりました。
その変化についてここから説明して行きます。

家族の扶養内で働いていた人も、自分で社会保険を払うことに!?

家族の扶養内で働いていた人も、自分で社会保険を払うことに!?

もともと「週に30時間以下の勤務、年収130万円未満」の人は、「扶養控除」と言って、家族の扶養に入って働くことができました。

この「扶養控除」とは、家族の扶養に入っている人は、自身で社会保険料を支払っていなかったとしても、家族(配偶者や父母)が会社の保険に加入しているのであれば、その支払いを原則として免れられる、という制度です。

つまり、家族の扶養に入って働く場合、自身で社会保険料の支払いをせずとも社会保険に加入することができ、年130万円まで、月々に換算すると約10万円程度の収入を得ることができていました。

しかし、社会保険適用の拡大を受けて、これまで通り家族の扶養に入って働くには「週あたりの所定労働時間20時間未満」「月収88,000円未満」という新たな壁ができてしまいました。それ以上働くことになれば、家族の扶養からは外れてしまい、(半分は会社負担とはいえ)新たに自分自身で社会保険を納めていかなければならなくなったのです。

適用拡大しても損をしないための、2つのプラン

適用拡大しても損をしないための、2つのプラン

こうした変化にどのように対処するかは、家族やその人自身のライフスタイルによって異なります。大きく、下記の2つから選ぶことになるでしょう。

  1. 以前よりも多くの収入を得る
  2. 以前よりも少ない金額に収入を抑える

一つひとつ見ていきましょう。

1 以前よりも多くの収入を得る

まず、ひとつめの「以前よりも多くの収入を得る」という選択肢。
「社会保険料の徴収分を差し引いてもプラスになるように、もっと収入を増やそう」とする考え方です。

年収を約20万円以上増やすことができれば、扶養から外れることで新たに「社会保険料として納めることになった金額」のマイナス分を補うことができます。そのために、毎月1~2万円程度の金額を現在の収入に積み重ねる必要があります。

例えば、時給1000円で働いているのであれば、月に10時間~20時間ほど働く時間を増やす計算です。1日の労働時間を1時間延ばしたり、今まで週に3回休んでいたのを週に2回の休みにしたり……といったことを考えることになるでしょう。

「以前よりも多くの収入を得る」という選択肢を選んだとき、このように多くの場合は働く時間が延びることに繋がります。そのため、育児や介護など家庭の事情で就業時間に制約があったり、体力に自信がなかったりする人にはなかなか厳しいかもしれません。

反対に「人手不足のなかで、扶養の制限があるということで帰らせてもらっていた」「専門資格を持っており、時給がとても高い。10時間~20時間もプラスしなくても、労働時間を月にプラス5時間程度するだけで十分」など、就業時間に制約がなかったり、専門スキルを持っているという人の場合は、比較的この選択肢を選びやすい可能性があります。

シフトの都合や人件費の問題などから、そもそも職場との交渉が難しい可能性もありますが、純粋に収入が増えることになりますし、働く時間が長くなることで活躍の機会が増えるかもしれません。

2 以前よりも少ない金額に収入を抑える

反対に、「以前よりも少ない金額に収入を抑える」という選択肢はどうでしょう?

この場合、まず年収が下がります。
例えば、年収129万円以下で働いていた人が、社会保険適用の拡大後も家族の扶養に入って働く場合、月収を88,000円以内に収めなければならないため、年間で最大105万6,000円以内の収入となります。そのため、少なく見積もっても年間で24万円近くのマイナスになることが想定されます。

月当たりに換算すると2万円ほども収入が下がるので、かなり大きいと言えるでしょう。場合によっては、携帯電話のプランの見直しや家のローンの見直しなどが必要になります。

さらに週当たりの労働時間が20時間未満と制限されるため任される仕事の範囲も以前より狭くなることが考えられます。それによって十分なキャリアが積めない可能性があるため、「子どもが大きくなったら復職をしたい」「今はパートタイマーだが、もっとステップアップしていきたい」と考える人にとっては厳しいものとなるかもしれません。

ただ、労働時間を減らすことで、家族と過ごす時間を増やすことができたり、ゆっくり過ごす時間を確保できたりして、スケジュール的にも心身的にも余裕が生まれやすくなるかもしれません。

今回のまとめ

今回ご紹介したように、2016年の10月から始まった社会保険適用拡大は、家族の扶養内で働く人やその家族に大きな変化をもたらしました。

今回ご紹介したふたつのプランを参考に、どちらの働き方がいいのかをしっかりと考え、ライフスタイルにあったほうを選択していきましょう。